研究論文

HbE/β-サラセミア患者における酸化ストレスに対するFPP(パパイヤ発酵食品)の臨床効果

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The Clinical Effects of Fermented Papaya Preparation (FPP) on Oxidative Stress in Patients with HbE/ β -Thalassaemia

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サラセミアは、ヘモグロビンの1種であるHbAの主要なαまたはβグロビン鎖の一つが部分的または完全に欠損することに起因する先天性溶血性貧血である。サラセミアの患者の赤血球(RBC)は、連続的な酸化ストレス下にある為、活性酸素種(ROS)が高レベルで生成され、グルタチオン(GSH)のような抗酸化剤の消費は増加し含有量が減少する。FPP(パパイヤ発酵食品)は、in vitroおよびin vivoの両方の酸化ストレスを制限することが示されている。抗酸化作用を有するFPPは、これらの患者のサラセミアの成熟RBC及び骨髄の赤血球前駆体の酸化損傷を軽減しヘモグロビン(Hb)値を改善すると期待される。

HbE/β-サラセミアの患者でRBC指数、酸化ストレス、QOLスコアについてFPP摂取による臨床効果を研究することを目的とした。定期的な輸血を受けていないHbE/β-サラセミア患者に12週間FPP3g12回)を与え、末梢血サンプルを試験期間中4週間間隔で採取し、Hb値、平均赤血球容積(MCV)、網状赤血球数、酸化試験(ROSおよび細胞内GSH量の産生(自然産生および酸化ストレス応答による産生))を測定し、試験開始時と12週目に健康調査アンケートでQOLを調査した。

7人の患者(女性5人、男性2人)が20061月から20064月にかけて臨床試験に参加した。被験者の平均年齢は19歳(4歳から27歳)であった。In vitro分析ではFPP摂取後、明らかにROSが減少しGSHは増加した(図12)。HbMCV、網状赤血球数、臨床パラメータやQOLスコアに有意差はなかった。FPPはすべての患者に高い忍容性を示した。 酸化ストレスパラメータは減少したものの、FPP摂取によりHb値やQOLには有意な影響はなかった。 HbE/β-サラセミアの患者の臨床パラメータでFPPの長期臨床効果を研究するためには、より大規模で長期な試験が必要だろう。

図_HbEサラセミア1.jpg

図1:FPP摂取後の刺激および非刺激の赤血球中の活性酸素種(ROS)レベルの平均

図_HbEサラセミア2.jpg

図2:FPP摂取後の刺激および非刺激の赤血球中のグルタチオン(GSH)レベルの平均

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