研究論文

神経変性疾患のリスク要因としての閉経後のミトコンドリアおよびレドックス機能障害:日本の機能性食品の効果検証に向けたパイロット研究

MITOCHONDRIAL AND REDOX DYSFUNCTION IN POST-MENOPAUSE AS RISK FACTOR OF NEURODEGENERATIVE DISEASE: A PILOT STUDY TESTING THE ROLE OF A VALIDATED JAPANESE FUNCTIONAL FOOD

J Biol Regul Homeost Agents. Jan-Feb 2020;34(1):111-121.

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閉経期の女性は、酸化ストレスが増加し、抗酸化能が低下する可能性があり、このことはニューロステロイドの減少とともに、アルツハイマー病の危険因子である。

本研究の目的は、閉経後の女性におけるレドックスおよびミトコンドリア機能に対してFPP (パパイヤ発酵食品、大里研究所) が与える影響を検証することである。被験者は、69人の治療を受けていない閉経後の女性で、グループAはマルチビタミン1 (MV) 1カプセルを1日2回、グループBはFPP 4.5 gを1日2回摂取した。グループCはコントロール群として、閉経前の女性23人で構成された。ベースライン時、および1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月目に、赤血球レドックスパラメータ、血漿酸化タンパク質、脳由来神経栄養因子 (BDNF)、末梢血単核球 (PBMC) のミトコンドリア内に存在するチトクロームcオキシダーゼ Vmax活性の測定を実施した。

1は閉経後の女性におけるMVFPP摂取による赤血球レドックスパラメータの経時変化である。閉経期の女性は閉経前の女性 (コントロール群) に比べ、マロンジアルデヒド (MDA) は増加しているが、ABいずれのグループでも正常化された。BMI≥26のグループAのサブグループではMVによるMDAの正常化は見られなかった (p<0.05)。その他のレドックス酵素は全てFPP摂取によってのみ有意に増加した。図1からわかるように、明らかに減少していた閉経期の女性の血漿中のBDNFも、FPP摂取によってのみ有意に増加した。また、カルボニルタンパク質レベルはBMI≥26のサブグループで高く(p<0.05)、FPPによってのみ減少した (p<0.05)。クエン酸シンターゼ活性に対するPBMC シクロオキシゲナーゼ (COX / CS:ミトコンドリア存在量と関係) は、閉経期のグループで減少しており (<40%) (p<0.01)、FPP摂取でのみ有意に回復した(p<0.05) (図2)。

これらのデータは予備的ではあるが、閉経後に起こるレドックスおよびミトコンドリア機能障害において、高用量の抗酸化剤の摂取ではほとんど変化がなかったのに対し、FPP摂取では顕著な改善が確認された。この結果は、FPPが閉経期に関連する神経変性疾患の予防につながる可能性を示唆している。

※1:MV組成 (1カプセル中): ビタミンE 200 IU, レスベラトロール250mg, コエンザイムCoQ10 50mg, ザクロ抽出物100mg, αリポ酸100mg, セレン80mcg

表1:閉経後の女性におけるMVとFPP摂取による赤血球レドックスパラメータの経時変化

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図1:閉経前の女性およびMV、FPPを摂取した閉経期の女性の血漿BDNFの経時変化

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図2:年齢別に調整されたPBMCのCOX / CS比の経時測定